『世界一わかりやすい俳句の授業』(夏井いつき著)
このところ俳句にはまっている。入門書を何冊か読んだ。面白い。作るのも、読み解くのも。一番役に立ったのは夏井いつきさん著『世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所、2018年8月)だ。
五七五に季語を入れて1句作れと言われても難しい。だが、夏井さん推奨の「尻から俳句」なら何とか初心者にもひねり出せる。下五に普通名詞、中七でそれを描写、上五に心情を代弁する季語を入れる。最近はこの定型をもとに、気がつけば指を折っている。同書と続編の『俳句鑑賞の授業』には、いろいろ教わった。型の大切さに加え、「鑑賞に正解はない。読み手にゆだねられる」、「季語の本意をつかむ」ことの大切さ…などなど。
俳句は普段記者が書いている記事とちょっと似ている。例えば、見出しを付ける作業は、短い言葉でポイントと全体像を伝える。現場雑観は、スナップ写真のようにその場面を切り取る。
相違点もある。記事は解釈を読者に委ねたりしない。さらに大きいのは、俳句はフィクションということだ。『新版20週俳句入門』(藤田湘子著、KADOKAWA)に「状況設定は自由に変更していいのです。つまり『ありうべき嘘』はついてもいい。より現実感が出てくるようならば、ためらわず状況設定を変更すべし、です」とあった。詩であり創作なのである。
形状をそのまま描写しているものだとばかり思っていた。ノンフィクションも多いだろう。が、「ありうべき嘘はついてもいい」というのは、30年以上ノンフィクションにこだわってきた記者には驚きであり、違和感が強い。いい悪いではない。記者が馴染めないだけだ。
ただ、ノンフィクション俳句をひねるのもとても楽しい言葉遊びである。自分の記事の推敲を始めると止まらなくなる記者に、俳句は合っている。「夜長」に多く写真が掲載された『よくわかる俳句歳時記』(石寒太編著、ナツメ社)を眺めるのも楽しい。いつかこのブログで1句披露できるといい。(2023.10.27 No.95)