本のこと

ファーストペンギンの地位

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『チーム』(堂場瞬一著)

 箱根駅伝に出場できなかった大学から寄せ集めた関東学生連合というテーマに加え、前回大会で自分がブレーキになり自校の本戦出場を逃したキャプテン、山登り5区での降雪という設定まで同じだった。前回紹介した池井戸潤さん著『俺たちの箱根駅伝』と、10年以上前に書かれた堂場瞬一さん著『チーム』(2010年12月、実行之日本社)である。学連について書かれた小説ということで、続けて「チーム」を読んだ。


 学連には、記者もライターとして興味を持ったことがあるくらいだから、書き手のアンテナに触れる普遍的なテーマなのだろう。とはいえ、難しさもすぐに思いつく。「寄せ集めの何のドラマも持たない学連選抜」のチームビルディングだ。数回しか顔を合わせないのだから、チームメイトでも直接話したことのない選手同士もいるだろう。そこにドラマを見出すのは逆に現実的ではない。実際、小説とは言えいずれの作品も前半のチーム作りの描写には苦労しているように思う。その点、三浦しをんさん著『風が強く吹いている』は弱小チームの成長物語になっていて楽しめた。


 そんな中で「チーム」はファーストペンギンとして海に飛び込み、「俺たち…」に設定をなぞられる原型となった。個人的には、「俺たち…」の方が達成感のある終わり方で楽しめたのだが、「チーム」はこれからも「学連作品」のファーストペンギンとしての地位は揺るがない。(2024.07.28 No.134)

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