『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』(伊藤絵美著)
メンタル本。そんなジャンル名があることを初めて知った。今年はそれらを何冊か読んだ。記者自身、メンタルの不調に陥り、何とかそこから抜け出そうともがいているからだ。
ブログで紹介した帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ』、『生きる力』のほかにも、『本気でトラウマを解消したいあなたへ』(藤原ちえこ著、日貿出版社、2020年2月)はセラピーの専門家によるものだ。『定年後 50歳からの生き方、終わり方』(楠木新著、中公新書、17年4月)『自衛隊メンタル教官が教える50代から心を整える技術』(下園壮太著、朝日新書、20年3月)は、正に定年退職を目前にした年代を対象にしたドンピシャのアドバイスだった。
今年最後に読んだメンタル本は、「2022年メンタル本大賞」なる賞をとったカウンセラーの伊藤絵美さん著『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』だ。細川貂々さんの挿絵が楽しい。新聞の広告に「大好評46000部!」とある。いかにメンタルの不調に苦しんでいる人が多いかが分かる。精神科医の知人に薦められた。
「時々詳しくコラムがありますが、それがまたおすすめなんです。認知行動療法はもう、精神科のスタンダードな治療法です」と。
メンタル本を何冊か読み、自分で解消法を習い、試してみて分かったのは、いろんな立場の人がいろんなアプローチの仕方をしていて、いろんな名前が付いているが、結局、古今東西、皆同じことを言っている。誤解を恐れずに一言でまとめてしまえば、悩みを抽出して書き出すことで客観化し、それをマインドフルネスな状態で観察するとともに、考え方の癖を正すということだ。
『道具箱』にも〈1年か2年ぐらいかけて本書全体に取り組むぐらいのイメージで十分です。カウンセリングを通じて人が回復するのにも、それぐらいはかかるのですから〉とあるように、特効薬などなく、焦りは禁物ということだ。
あえてもう一つ付け加えるとすれば、年齢ごとの課題や精神のメカニズムを学んでおくことは大切だ。長女が医療系の学校に通っていてテキストを見せてもらった。「人間発達学」という分野がある。『自衛隊…』は〈50代、そして定年というターニングポイントには、ほぼ、うつと同じことが起こります〉と指摘している。子どもたちだって思春期前に感情がどう働くかを知っているのと知らないのでは、不安への対処の仕方も違ってくる。ノアが箱舟を作ったのは雨が降る前だった。
訪問してくれた皆さま、今年1年ありがとうございました。よいお年をお迎えください。(2022.12.30)