日々のこと

断酒体験記(中)

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 断酒継続のために、知り合いの精神科医師に薦められた本がある。『通院でケアする! アルコール依存症の早期発見とケアの仕方』(世良守行著、10年3月、日東書院)だ。アルコール依存症患者を長く看てきた看護師さんの著作だ。本書は依存の地獄をこれでもかと連ねる。脅されている気になるが、地獄は実際にある。

 記者も取材したことがある。横浜のドヤ(簡易宿泊所)街、寿町だ。かつては労働者のまちだった寿町とアルコールの関係は深い。市の統計によると、寿町のアルコール依存症罹患率は市内の一般地区の100倍だ。体験談を幾つも聞いた。幻覚を見て自宅に火を放ったが記憶がない男性がいた。飲酒運転で検挙されても生きづらさから逃れるために何度も再飲酒を繰り返す人がいた。家族から絶縁され、逃げるように路上に出た人がいた。

 アルコール依存症は、「否認の病」と言われる。自分が依存症であると認めない。記者も飲酒をしているときは認めなかった、いや認めたくなかった。が、断酒した今はこう思う。「自分は依存症、または黒に近いグレーだった」と。

 本書でもっとも記者に響いたのは「父親が依存症の場合、男子は依存症になる確率が高く、女子は母親と同じように依存症の配偶者を持つ確率が高いと言えます。これが家族連鎖です」という記述だ。女子の場合「共依存関係をつくる確率が高い」のだという。記者には1男2女がいる。恐怖を覚えた。タバコを止めるのは本当に大変だったが、アルコールに関しては幸い、離脱症状がほとんどなかった。依存度合いが弱かったのかもしれない。ノンアルコールビールで十分満足できる。主治医は「珍しいケースです」と言った。(2023.01.31)

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