日々のこと

自習の限界

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『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』(大野裕著)


 昨年末から適応障害の治療で精神科に通っている。主治医から「薬で症状を抑えている間に認知療法を」と紹介されたのが『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』(創元社、2003年3月)だ。著者は精神科医の大野裕さん。精神疾患の治療で主流となっている認知療法について、実際に「自習」を繰り返してコツを身に着け、自分の考え方の癖(スキーマ)に気付き、より柔軟に考えらえるよう手助けしてくれるという。要はカウンセリングを自分でやってみようということだ。


 精神科の診察は月1回。現状を説明し、薬を処方され、次回の診察日を決めて終わる。その間、10分程度。これで治るとは思えないので、聞いてみた。カウンセリングをしてもらえないかと。主治医によると、手間も暇もかかるため、医師が保険診療で行うことはできないとのことだった。臨床心理士が保険外診療(自由診療)で行っているという。知らなかった。料金の相場は1回30分~1時間で5千~1万円だそうだ。


 そこで勧められたのが、『自習帳』だ。説明と例示の後「それでは、あなた自身の問題について考えてみてください」。
 ステップ1:問題リストを作成する→いくつか挙げてみた。
 ステップ2:解決目標を設定する→「自分ではどうにもならないのだけど」と思いながら立ててみた。
 ステップ3:目標が適切か確認する→「重要である」は☑、「解決可能である」は???


 認知療法を含めセルフケアの本は何冊も読んだ。ワークブック形式の本も多い。「カウンセリングと同等の効果」をうたう本もあった。本書はその中で最も分かりやすく認知療法について説明してくれた。読むものではなく、実践するものであることは重々承知している。が、記者の場合、例えば「ここで言う解決可能って?」と行き詰ってしまった。


 そこが「自習」の難しさだ。勉強と同じである。教科書と問題集だけを与えて済めば学校や教師は要らない。講義をせず、自習を中心にして生徒の疑問に答え、アドバイスするためだけに講師がいる塾もある。もし、本のワークで「カウンセリングと同等の効果」を上げられるのなら、精神科医も臨床心理士も要らなくなってしまう。専門家の役割は大きい。

 自習帳にはまた今度、取り組んでみよう。(2023.04.16)

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