『54歳おひとりさま。古い団地で見つけた私らしい暮らし』(きんの著)
前回、メンタルの整え方などについて書かれた本を紹介したが、同様のやり方をしっかり実践している人がいた。『54歳おひとりさま。古い団地で見つけた私らしい暮らし』(2023年10月、扶桑社)の著者、きんのさんだ。
「自分は何が不安なのか思うままに書き出してみたら、心がスッキリしたんです。不安を『見える化』したことで、『こうすれば案外大丈夫かも』と具体的に対処法を考えることができるように。それを行動に移すことで少しずつ不安が減っていきました」「不安を感じたら、とにかく動くようにしています」
記者とほぼ同年代、築50年超の団地で一人暮らしの女性が日々をつづったブログが書籍化されたものだ。『団地のふたり』のノンフィクション版でもある。前述の不安対処法は、精神科医の樺沢紫苑さんも勧めている。
先日、久しぶりに会った若い友人もブログに詩や短歌を書き始めた。4年前に取材で知り合った。現在高校2年生の彼女は小学校のときから不登校で心身の不調に悩んでいる。「初めて書いたので恥ずかしいです」と言いながらブログのURLを教えてくれた。元気そうな笑顔からは想像できない内面がブログにつづられていた。「もやもやがたまると文章にしています。自分と切り離す作業で、書くと気持ちが落ち着きます」と話していた。
きんのさんは、本書の元になったブログ「団地日記」について「終活の一環でもあります。人生の棚卸しのようなもの。今感じてることをブログに綴ることで考えを整理していく」と書いている。記憶はもちろん、思考までネットに頼りがちなこの頃。ブログは自分の考えを自分の言葉で書く。日記と違い誰かが見るかもしれないと思うと自制心も働く。ブログは精神を安定させ鍛える、人間らしいネットの使い方である。(2025.02.11 No.156)