『老いてもヒグチ 転ばぬ先の幸せのヒント』(樋口恵子著)
評論家の樋口恵子さんが老いを語るエッセイ集の最新刊『老いてもヒグチ 転ばぬ先の幸せのヒント』(24年12月、清流出版)を読んだ。さまざまな出版社から出ているこれまでの著書は、老年期の過ごし方が中心だったのに対し、本書は高齢者施設の選び方、遺書、葬儀…と最期に向かうあれこれに重心が移っている。
樋口さん、現在は93歳。92歳だった執筆時点で要支援2という。「私は車いすに乗せてくれさえすれば、飛行機に乗ることはできますが…」と身体的な困難を書く。年齢を考えれば、書く内容の比重が変わっていくのも頷ける。一方で「歳をとると毎日が『老っ苦う(億劫)』」とユーモアは健在。「これからの高齢者が直面するのは、人生100年時代初めての老いである」と課題を的確に喝破し、そのお手本として老いを実況中継し、少子高齢化社会への提言をリードする。「これからも、取材などでの発言や執筆、書籍の出版などを通して活動を続けていくことでしょう」と続ける。あっ晴れである。
記者はもうすぐ高齢者の仲間入りという年齢だ。樋口さんとは逆に体はまだ元気だが、視力や脳の働きが衰え、既に「老っ苦う」と感じることが増えている。若いころは、双六のように人生にはきっと「上がり」があると思っていたのに、どうやら上りは一部の特権的な人たちだけのもののようだと、認めたくなかったことを再確認するこの頃。樋口さんに釘を刺された。
「まっとうに歳をとっていくためには、それ相応の努力がいることを肝に銘じて、ケアされ上手になりましょう」
死ぬまで努力とアップデート。ちょっと「老っ苦う」。でも、見通しがないままより生きやすい。今後も老いを実況中継して後輩たちをご指導ください。(2025.08.02 No.173)