本のこと

That’s Entertainment !

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『百舌落とし』(逢坂剛著)

 学生時代に『カディスの赤い星』など著者のスペインものをむさぼるように読んだ。「逢坂剛さんと言えばスペインだ」と勝手に決め付け、著者の他の作品は受け付けなかった。そんな意固地なゼロヒャク思考も今は昔。昨年末から「百舌シリーズ」(集英社)全7作を一気に読んだ。


 ハードクライムサスペンスというのだろうか。公安、悪徳警官と監察、爆破、殺戮、エロス、警察権力を恣意的に操ろうとする巨悪との戦い…。とにかく派手さてんこ盛りである。

 新聞報道にリアリティがない、人が死に過ぎる、登場人物の関係を説明するための繰り返しが多いなど、言いたいことはたくさんある。それでも次の展開が気になってページをめくる手が止まらないのだ。伏線も気持ちよく回収されていく。何と言っても結末は全く予想がつかず、7作とも「やられた」と脱帽するしかない。殺し屋「百舌」も魅力的だ。That’s entertainment !である。


 シリーズ最後の『百舌落とし』(2019年8月)は保守化が進み、防衛装備移転三原則を緩和して装備品の他国への輸出を拡大しようとする現在の政治状況ともダブる。30年以上書き継がれてきたシリーズで、1作目の『百舌の叫ぶ夜』(1986年)で描かれた左翼によるテロは今やピンとこない(本は旬に読むべき)が、高市早苗首相の持論であるスパイ防止法策定など公安機能強化の動きは、1作目からのテーマでもある。現実世界が劇画のように見えてくる。


 とにかく面白かった。やはりゼロヒャク思考はよくない。次は逢坂さんの鬼平シリーズも読んでみようかな。(2026.01.07 No.184)

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