『わたしに会いたい』(西加奈子著) 今年最初の1冊は、主に女性の身体や性にまつわる短編集『わたしに会いたい』(2023年11月、集英社)。コロナ渦にあって著者である西加奈子さん自身の乳がん発覚と治療を綴ったノンフィクシ […]
本のこと
自死のリアリティ
『蜩ノ記』(葉室麟著) ここかしこに散りばめられた地雷、がんじがらめの人間関係。遍在する切腹の機会。幾つ命があっても足りない。武士は大変だ。それが、葉室麟さん著『蜩ノ記』(2011年10月、祥伝社)を読み始めての感想だ […]
浄化の受け皿
『リスペクト』(ブレイディみかこ著) ブレイディみかこさんの『リスペクト』(筑摩書房、2023年8月)を読んだ。ロンドン五輪後の2014年、同市が行ったソーシャル・クレンジング(地域社会の浄化)で住居を失ったシングルマ […]
死の風景
『夜明けを待つ』(佐々涼子著) 黒々とした厚い雲の隙間からわずかにのぞく太陽が空に光のグラデーションをつくる。夜明けを待つ―。自分の死と向き合うとはそんな気持ちなのだろうか。表紙の写真のような心象風景が広がるのだろうか […]
男って…
『ファーストラヴ』(島本理生著) 父親を殺害した女子大生と、その動機や真相に迫ろうとする臨床心理士。本の紹介文を読めば、性的虐待がテーマの心理ミステリーだろう想像がつく。が、読者の想像を超えないと小説として成立しない。 […]
ホラー小説
『定年オヤジ改造計画』垣谷美雨著 帯には「長寿時代を生き抜くヒントが詰まった『定年小説』の傑作」とある。ユーモア小説だと思っていた。前回エッセイを紹介した垣谷美雨さんの小説『定年オヤジ改造計画』(2020年9月、祥伝社 […]
まだまだ惑い中
『行きつ戻りつ死ぬまで思案中』(垣谷美雨著) 垣谷美雨さんのエッセイ『行きつ戻りつ死ぬまで思案中』(2023年4月、双葉社)を読んだ。垣谷さんは小説家だが氏の小説を読んだことはない。作家として成功しながら、記者と同じよ […]
読者の想像力
『火車』(宮部みゆき著) 宮部みゆきさん著『火車』(新潮文庫)は1992年7月の作品。当時、記者は社会人2年目。1年間の内勤を経てちょうど現場に出た年だ。 休職中の刑事が、遠縁の男性の婚約者を捜すストーリー。婚約者は […]
子ども食堂の原動力
『池袋ウエストゲートパークⅤⅣⅤ 神の呪われた子』(石田衣良著) このブログで『池袋ウエストゲートパーク(IWGP)』について書いたのは、今年の1月だった。気がつくと、ブログを始めてから1年以上過ぎていた。IWGPファ […]
制約が生んだ友情物語
『まいまいつぶろ』(村木嵐著) 口のきけない徳川9代将軍家重と、仕える大岡忠光の主従を超えた友情物語である。村木嵐さん著『まいまいつぶろ』(幻冬舎、2023年5月)だ。どこまでが事実でどこからがフィクションか分からない […]