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怪獣・オン・ザ・ロード@東所沢

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 口から火を吐き、背中からはビリビリ光線。ワニに似た怪獣が足元にいた。先日、埼玉県所沢市東所沢の知人宅に2泊した。2日目の朝、散歩をしようと家の前の路上に出ると、ほほえましい怪獣の絵がチョークで描かれていた。ほかにも、道いっぱいに落書きが広がっていた。

 記者が子どもだった昭和の時代、住宅街の路上は子どもたちのキャンバスだった。舗装道路にいっぱい絵を描いて遊んだ。キャッチボール、壁当て、缶蹴り、泥警。Sの字を地面に描いて、相手チームの陣地にある宝を奪う「Sケン」もよくやった。車が来たらどけばいい。道路は子どもの大事な遊び場の一つだった。

 だが、そんな光景はとんと見なくなった。だから、東所沢の落書きは懐かしくも新鮮だった。夕食の際にこの話題を持ち出したら、宿泊先のお父さん(86)が「俺が描いていいって言ったんだよ」。公園では高齢者向けの健康器具の設置が進む一方で、ボール遊びや木登りが禁止されるなど、子どもの遊びへの制限がどんどん強まる中で、わが意を得たりである。昭和のお父さんは心強い。

 路上で、落書きや子どもたちが遊んでいるのを見なくなったのはいつ頃からだろうか、とノスタルジックなことを考えていたら、世の中はもっと深刻な事態になっていた。

 「路上 遊び」で検索してみた。最初にヒットしたのは奈良県橿原市のホームページ。「近年、道路を占領して遊び場所にするなどして、交通事故や近隣トラブルの原因となる事案が全国的に問題になっています。道路は遊び場所ではありません。家族や周囲で注意を呼びかけあって、道路遊びをなくしましょう」とある。他の自治体も同様の注意喚起をしている。インターネット上では、路上で大騒ぎをしながら遊ぶ子どもと注意しない親のことを指す「道路族」という俗語も登場し、刑事事件や民事訴訟に発展するケースが増えているという。

 何事にも限度がある。子どもが車に傷を付けたり、夜遅くまで袋小路でバーベキューをして騒ぐなどは、近隣住民にとっては看過できないだろう。それを注意されたと逆ギレするのは論外だと思う。

 野放図な遊びをおおらかに見守ってくれた昭和の子育て世代と当時の風潮に感謝する。だが、前述の東所沢のお父さんは別に、今、子どもたちの遊びを阻害しているのは、昭和の子育て世代=高齢者だったりもする。「お互いさま」の精神を失い、お互いが被害者意識を先鋭化させ、不寛容さが極まった令和。東所沢の怪獣の顔が心なしか悲しげに見えてきた。(2022・11・16)

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