本のこと

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答えじゃなくて…

『スター』(朝井リョウ著)  若い作者なのに、随分説教臭いな。朝井リョウさんの『スター』(朝日新聞出版、2020年10月)の感想だ。『正欲』で追求した多様性の在り方、承認欲求をより身近な題材を用いて描いている。  新人の […]

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同時代作家

『われらの時代』(大江健三郎著)  「快楽の動作をつづけながら形而上学について考えること、精神の機能に熱中すること、それは決して下等なたのしみではないだろう。(中略)南靖男は、かれの若わかしい筋肉となめらかな皮膚のすべて […]

本のこと

「復興」の現実

『荒れ地の家族』(佐藤厚志著)  東日本大震災から間もなく12年。3月11日を前に佐藤厚志さんの第168回芥川賞受賞作『荒れ地の家族』(新潮社、2023年1月)を読んだ。震災の人的被害は、同年3月1日時点で死者1万590 […]

本のこと

作家のブラックボックス

『明日は、いずこの空の下』(上橋菜穂子著)  本はほとんど図書館で借りている。常に上限いっぱいに予約を入れている。人気があったり所蔵数が少なかったりする本ばかり予約していると、なかなか順番が回ってこない。手元に読む本がな […]

本のこと

想像のための補助線

『宣告』(加賀乙彦著)  訃報に接し、初めて手に取った。加賀乙彦さん著『宣告』(上中下巻、1979年、新潮文庫)。交流があった実在の死刑囚をモデルに拘置所医官を務めた精神科医・小説家が書いた長編小説だ。テーマの重さとリア […]

本のこと

唯一無二

 2月1日の朝日新聞朝刊に眼を射た記事があった。続けて2回読んだ。尊敬する同世代のノンフィクション作家、佐々涼子さん(54)が悪性脳腫瘍と診断され、闘病しているという。佐々さんのツイッターで確認した。最新刊『ボーダー 移 […]

本のこと

システムを暴け

『その名を暴け #Me Tooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』(ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー)  映像化される前に原作本を読むようにしている。今回は珍しく後先が逆になった。が、映画では短い時間に情報量が […]

日々のこと

断酒体験記(中)

 断酒継続のために、知り合いの精神科医師に薦められた本がある。『通院でケアする! アルコール依存症の早期発見とケアの仕方』(世良守行著、10年3月、日東書院)だ。アルコール依存症患者を長く看てきた看護師さんの著作だ。本書 […]

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文体

『かか』(宇佐見りん著)『推し、燃ゆ』(同)  〈そいはするんとうーちゃんの白いゆびのあいだを抜けてゆきました。〉 宇佐見りんさんのデビュー作『かか』(2019年11月、文芸賞・三島由紀夫賞受賞)冒頭の一文だ。「かか語」 […]

本のこと

物語の世界観

『池袋ウエストゲートパークⅩⅧ ペットショップ無惨』(石田衣良著)  新刊が出るとつい読んでしまう。確か村上春樹さんがエド・マクベイン著『87分署』シリーズについて、こう書いていた気がする(間違っていたらごめんなさい)。 […]