本のこと

学校教育

授業に芥川賞作品を

『この世の喜びよ』(井戸川射子著)  ショッピングセンターの喪服売り場で働く女性が、フードコートの常連の少女と知り合い交流する中で、かつての子育ての日々を思い出す。井戸川射子さんの『この世の喜びよ』(講談社、2022年1 […]

本のこと

「記者」正岡子規

『正岡子規』(ドナルド・キーン著)  ざわつく一冊だった。『正岡子規』(ドナルド・キーン著、新潮文庫、2012年8月)である。〈柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺〉日本人なら一度は聞いたことがあるだろう俳人の評伝だ。記者がざ […]

本のこと

緊張感

『新宿鮫ⅩⅡ 黒石』(大沢在昌著)  待望のシリーズ最新刊である。第2部のスタートとなった前作から3年ぶり。大沢在昌さんの『新宿鮫ⅩⅡ 黒石』(光文社、2022年11月)だ。中国残留孤児2、3世組織の内部抗争から起こった […]

日々のこと

自習の限界

『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』(大野裕著)  昨年末から適応障害の治療で精神科に通っている。主治医から「薬で症状を抑えている間に認知療法を」と紹介されたのが『こころが晴れるノート うつと不安の認知療 […]

本のこと

長編か短編か

『地図と拳』(小川哲著)  4年を超える連載と巻末8ページにわたる参考文献。全640ページ。重い。厚い。物理的にも内容的にも重厚な長編小説だった。小川哲さん著『地図と拳』(集英社、2022年6月)である。日露戦争前夜から […]

本のこと

前世紀のクワイエット・クイッター

『部長の大晩年』(城山三郎著)  「毎日が日曜日」。本のタイトルが流行語にもなった城山三郎さんによる俳人、永田耕衣さん(1900~1997年)の評伝『部長の大晩年』(新潮文庫、2004年8月)を読んだ。永田さんのことは本 […]

本のこと

意外さとギャップ

『虐殺器官』(伊藤計劃著、早川書房、2007年6月)  黒地に白と銀の角ばった文字が並ぶ表紙。タイトルは「虐殺器官」。これだけでは、何の本か全く想像がつかない。裏表紙のあらすじを読んで、近未来の軍事・インテリジェンスもの […]

本のこと

答えじゃなくて…

『スター』(朝井リョウ著)  若い作者なのに、随分説教臭いな。朝井リョウさんの『スター』(朝日新聞出版、2020年10月)の感想だ。『正欲』で追求した多様性の在り方、承認欲求をより身近な題材を用いて描いている。  新人の […]

本のこと

同時代作家

『われらの時代』(大江健三郎著)  「快楽の動作をつづけながら形而上学について考えること、精神の機能に熱中すること、それは決して下等なたのしみではないだろう。(中略)南靖男は、かれの若わかしい筋肉となめらかな皮膚のすべて […]

本のこと

「復興」の現実

『荒れ地の家族』(佐藤厚志著)  東日本大震災から間もなく12年。3月11日を前に佐藤厚志さんの第168回芥川賞受賞作『荒れ地の家族』(新潮社、2023年1月)を読んだ。震災の人的被害は、同年3月1日時点で死者1万590 […]