飼っていた亀が死んだ。記者が死なせてしまった。名前をカシオペアといった。
春になってからも餌を食べず、ずっと元気はなかった。動物病院に通院していた。医師の診たては肺炎だった。抗生剤と栄養剤を点滴していた。先々週、記者が連れて行ったときは、先生から「体重は増えてます。次は餌を持ってきてください。食べさせましょう」と言われた。26日、長男が病院に連れて行った際に「経過は良好。暖かくして様子を観ましょう」と、その日を最後に通院はひとまず終わった。
一度は元気になっていたと思う。とはいっても、自分で水中に浮いている餌を求めることはせず、最近は開けた口にピンセットで餌を入れてあげていた。一度口に入れた餌を吐き出すことも多く、本調子ではなかった。
今朝、いつものように餌をあげようと、水槽を部屋からベランダに移し、亀を水槽から出した。最近にしては珍しく、亀島の下に潜っていた。取り出しても手足としっぽをだらっと伸ばしたままだ。嫌がる様子もない。つついても首をすくめることはない。目を開けているから起きていると思ったが、そうではなかった。そのままだった。2度と動き出すことはなかった。
5年ほど前のある秋の朝。台風の翌日だった。川沿いをジョギングしているときに道路にまで這い出してきているのを見つけ、拾ってきた。ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる亀の名前をもらった。
亀ってこんなに素早く動くんだと驚いた。日光浴は首を伸ばして気持ちよさそうだ。散歩させるとすぐ草むらに潜ってしまう。後ろ足で立って水槽の壁に手をつく姿は愛らしい。自分の手から餌にぱくつくとうれしい。
悔やまれることだらけだ。あの時、道路から川辺に戻してあげれば、自然の中でもっと長生きできたかもしれない。冬場はもっと暖かい環境を作ってあげればよかった。何をしなくても毎冬を乗り越え春を迎えていたので甘く見ていた。胸の奥が痛い。鼻の奥がつんとする。家族にお別れを言ってもらい、近くの森にお墓をつくった。ごめんね、カシオペア。(2023.05.29)